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第5回日中財政研究会が開催されました。

  • 3月26日
  • 読了時間: 4分

■ 開催概要

開催日時

2025年1月19日(日)

開催形式

オンライン・対面 合同開催

共催機関

日中財政研究会 / 中央財経大学 / 中国人民大学

発表者

徐 一睿(専修大学経済学部教授)

発表題目

政府間財政調整における「ひと・もの・かね」の統合的アプローチ―ドイツ・中国の水平的調整制度の比較から―

 

■ 発表概要

今回の研究会では、専修大学大学院経済学研究科の徐一睿氏より、政府間財政調整における水平的調整の新たな可能性について報告が行われた。

報告は、従来の政府間財政調整論が「かね」(財源)の移転に偏重してきたという問題意識から出発した。人口減少と若年層の流出により、地方自治体の政策立案・実施能力が構造的に低下している現在、単なる財源移転では地域の自立的発展を促すことが困難であるとの分析が示された。この問題を氏は「財源はあるが人材がいない」問題と定義し、「吸収能力(absorptive capacity)」の不足という概念的枠組みで整理した。

この問題意識を踏まえ、本報告ではドイツの州間財政調整制度(Länderfinanzausgleich)と中国の対口支援制度の比較分析が行われた。

■ ドイツの州間財政調整制度

ドイツの制度は、基本法第107条に根拠を持つ純粋な財政移転メカニズムとして1970年に本格施行された。各州の財政力指数を算定し、富裕州から財政力の弱い州へと直接移転することで、全州の財政力を全国平均の99.5%以上に維持することを目的とするものである。

しかし、1990年の東西ドイツ統一後、旧東ドイツ5州の財政力が西ドイツ平均の約40%に過ぎなかったため、移転規模が年間50億マルクから250億マルクへと急増した。また、累進的拠出率構造が州の財政努力へのインセンティブを低下させ、拠出州の不満が蓄積した結果、2020年に垂直的調整への転換という大改革が行われた。東西統一から30年が経過した現在でも、旧東ドイツ地域の労働生産性は西ドイツの約80%にとどまっており、純粋な財源移転のみでは地域間格差の根本的解決には至らないことが示された。

■ 中国の対口支援制度

中国の対口支援制度は、計画経済期の「三線建設」を源流に持ち、改革開放後に体系化された水平的財政調整メカニズムである。その最大の特徴は、財政資金の移転にとどまらず、①人材・資金・物資支援、②技術・医療支援、③産業協力・投資、④教育・研修支援の四類型を統合した「ひと・もの・かね」三位一体型の支援体系にある。

人的資本移転は三層構造で制度化されている。第一層は政策決定層における「掛職幹部」制度(副省長・副市長級幹部の2〜3年任期での派遣、2020年時点で全国3,186名)、第二層は「組団式(シンジケート)」支援による専門家チームの年間約8,400名派遣、第三層は年間約25,000名が参加する一般職員の交流研修である。この三層構造により、政策レベルから実務レベルまでの包括的な知識移転が実現し、受援地域の吸収能力が向上する仕組みとなっている。

また、制度には3〜5年の期限設定と段階的削減の仕組みが組み込まれており、支援依存度は開始時の平均18%から10年後には5%以下に低下している。対口援蔵(チベット支援)や閩寧協作(福建省―寧夏協力)などの事例では、受援地域の財政自給率が着実に向上しており、受援地域の自立を促進する設計が有効に機能していることが示された。

■ 比較分析と日本への示唆

報告では、ドイツの「財源移転特化型」と中国の「三位一体型」の比較を通じて、地域間格差の根本的解決には知識・技術・人材の包括的移転が不可欠であるとの結論が示された。

東京一極集中と地方の疲弊に直面する日本への示唆として、以下の政策的提言が示された。

(1) 財政移転に人的資本移転を組み合わせた包括的支援システムの構築(都道府県間職員派遣制度の拡充等)

(2) 地方交付税制度を補完する水平的調整メカニズム(「地域間パートナーシップ制度」)の導入検討

(3) 支援の時限性と段階的削減の原則による依存体質防止とインセンティブ設計

(4) 小規模自治体の吸収能力向上への重点投資(広域連携強化・都市部からの人材還流促進)

 


今回の研究会は、日中財政研究会、中央財経大学、および中国人民大学の三機関による共同開催の形式で実施された。国際連携を通じた研究交流の深化が図られており、今後も継続して共同研究会の開催を予定している。

 
 
 

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