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中国人民大学複写新聞雑誌資料『財政と税務』専欄

公開·6名のメンバー

中国央地財政関係の演進:一つの理論フレームワーク

今回は本研究会と中国人民大学との間の研究情報共有プログラムで5回目の論文紹介になります。

この論文は、中国人民大学中国財政金融政策研究中心・財政金融学院の吕冰洋(リュウ・ビンヤン)教授と、対外経済貿易大学国際経済貿易学院の胡深(フー・シェン)先生(通訊作者)が共同で執筆され、中国経済学界の最高峰誌『経済研究』(2024年第6期、pp.69-87)に掲載されたものです。本論文は、中国の中央・地方財政関係(中国の財政実務では「財政体制」と称される)の歴史的変遷を、「多級政府・多目標決策(複数レベルの政府による多目標的意思決定)」という視角から体系的に理論化することを試みています。

従来、中国の政府間財政関係は財政連邦制(market-preserving federalism)や財政分権理論によって説明されることが多くありましたが、著者らは、これらの枠組みが中央政府の能動的役割や各級政府の多目標的な意思決定を十分に捉えきれていないと指摘します。そのうえで、政府間の「情報の非対称性」と「政府の多目標決策」という二点に着目し、政府間財政関係の演進に関する三つの理論命題を導き出しています。すなわち、(1)政府間財政関係は主に中央政府の「激励(インセンティブ)・平衡(バランス)・統制(コントロール)」という三大目標の均衡によって決まること、(2)それは地方政府行動の産出弾性・コスト係数・外部性・不確実性といった客観的条件に制約されること、(3)中央・地方双方の積極性の発揮は政府間財政関係のみならず、政府目標や行動の産出弾性・コストにも左右されること、の三点です。

理論モデルの構築においては、Holmstrom & Milgrom(1987)の委託代理(プリンシパル・エージェント)モデルを政府行動の文脈に応用し、財権を「税収分成比率」、事権を「政府が取りうる行動」として定式化している点が特徴的です。これにより、税収分成・移転支付(移転支出)・事権配分という三要素を、一つの枠組みの中で統合的に分析することを可能にしています。

特に注目すべきは、著者らがこの理論を用いて、建国以来の中国政府間財政関係の変遷を「統収統支期」・「分灶吃飯(財政請負)期」・「分税制期(1994〜2011年)」・「後分税制期(2012年〜現在)」の四段階に区分し、各時期の制度改革が三つの命題によって一貫して説明できることを示している点です。中央政府が地方の経済発展への積極性を引き出そうとすれば地方の財政権限を拡大するが、それが地域格差の拡大・統一市場の分断・中央のマクロ統制力の低下・地方債リスクの拡散といった新たな問題を生み、次なる改革圧力を生み出す——この調整と変化の循環的プロセスこそが、中国の財政体制改革の内在的論理であると論じています。

結論として著者らは、中国の政府間財政関係を表現するには「財政連邦制」や「財政分権」よりも、財政「集分平衡」あるいは「財政共権」という概念の方が正確であると主張します。それは、全国を一つの大局として各方面の積極性を引き出すという国家統治の特色(「全国一盤棋」)や、中国の郡県制的伝統に符合するものであり、政府間財政関係の本質を「活力(地方の積極性)」と「秩序(中央の統一領導)」との均衡として捉える視座を提示しています。地方政府の債務問題や財政自主権のあり方を考えるうえでも示唆に富む、理論的射程の広い研究です。

吕冰洋(リュウ・ビンヤン) プロフィール中国人民大学中国財政金融政策研究中心・財政金融学院教授。専門は財政学、政府間財政関係、税収理論。


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